皆さん、こんにちは。
土井けいじです。
先日、仕事終わりにふと歩いていると、衝撃的な物を見つけてしまいました!
それは「ラーメン専用の自販機」。
パンやお菓子であれば、たまに見る機会はありましたが、ラーメンの自販機を目にするのは、このときが初めてでした。
少し帰宅を急いでいたので、ラーメンの購入も、写真の撮影もし損ねてしまいましたが、こういった革新的なサービスを見ると、それが誕生するまでのプロセスや経営判断が、どうしても気になってしまう。
ベンチャー経営者の性というものなのでしょう。
今回は、このラーメン専用自販機を見て、僕がベンチャー経営者として感じたことを、率直に書き綴りたいと思います。
■これぞベンチャー! 時代の流れを読んだ経営判断!
僕が目撃したラーメン専用自販機、PRタイムズでも取り上げられていました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000156.000083813.html
ラーメン専用自販機、展開しているのは、大阪に本社を置く「ウルトラフーズ株式会社」。
独自の食材開発や販売の手法で、30年以上の長きに渡り、味にこだわり抜いたラーメンを提供し続けている会社です。
ベンチャー経営者としては、30年以上一つの企業が持続している、これだけでもう、心からの尊敬に値します。
ほとんどのベンチャー企業が、立ち上げから10年以内に倒産すると言われる中で、30年も生き残っている。その裏には、その時々の経営者さんの努力と、的確な経営判断があったのだと思います。
そして、今回のラーメン自販機のスタートも、ベンチャー経営者としては、「素晴らしい!」としか言いようのない、見事な経営判断に裏打ちされている気がします。
そもそも、ラーメン専用自販機スタートの背景には、コロナ禍による外食需要の低下、それに伴うデリバリー需要の上昇を機に、こだわりのラーメンを「自宅で」「手軽に」「誰でも」「いつでも」食べられるようにしよう、という想いがあるそうです。
ラーメン屋からすると、一見ピンチでしかない状況を、時代の流れを的確に読み、逆にチャンスととらえ、新規販売戦略を打ち立てた、ベンチャーの鏡ともいうべき経営判断です。
■ベンチャー経営者目線で見た、ラーメン自販機の弊害
さて、ラーメン自販機を打ち出すということ自体は、大変見事な経営判断ですが、ベンチャー経営者の視点からすると、心配事も1つ。
それは、ラーメン自販機の出現が、もともとの売上の柱だった、店舗でのラーメンの売上を圧迫し、かえって経営状況の悪化を招くのではないか、という点です。
ラーメン屋のラーメンと同じ味が、自販機で簡単に手に入り、いつでも食べられる状態になると、人々がラーメン屋に足を運ぶ理由がなくなってしまいます。
そのため、自販機の出現は、ラーメン屋の店舗売上を悪化させてしまう可能性を孕んでいます。
自販機の出現で、店舗売上は縮小するか?
―ベンチャー経営者としての僕の答えは、NOです。
(もちろん、多少の売上減少は不可避だとは思いますが。)
その理由を、これからお話しします。
■ベンチャー経営の肝「差別化戦略」の目線で見た「自販機VS店舗」 3つのポイント
自販機が出現しても、店舗売上が悪化しないと僕が思う理由。
それは、「それぞれで提供している価値が違う」からです。
―AIの時代、自動化の時代と言われる今でも、アナログでのコミュニケーション、サービス提供を大切にしているベンチャー経営者としての僕の想いを込めて表現するなら、「ラーメン屋にはラーメン屋にしか提供できない価値がある」、ということです。
ときにベンチャー経営者は、「どうすれば他と差別化できるだろうか?」ということを、極めて真剣に考えることが多いです。
それがベンチャー経営の肝ですし、ベンチャー企業が生き残っていく上で、絶対に欠かすことのできない要素だと思います。
そんなベンチャー経営者の目線からすると、ラーメンの実店舗と自販機は、それぞれがうまく差別化されているなと感じます。
店舗と自販機、それぞれでラーメンを販売した場合のメリットを整理すると、下記のようになります。
【ラーメン屋】
1、体験の購入
2、人との接点
3、質へのこだわり
【ラーメン自販機】
1、手ごろさの購入
2、独りの時間
3、量へのこだわり(大量生産)
以上3つの観点について、1つずつ詳述します。
■観点① 「体験の購入」か、「手ごろさの購入」か
まず1つ目は、「消費者が手にする価値の違い」です。
ラーメン屋で買おうが、自販機で買おうが、いずれにせよラーメンが食べられるという点では、消費者がお金を払って手にする価値は同じです。
しかし、世の中のサービス、商品は何でもそうですが、「付加価値」がつきます。
例えば、「ルイ・ヴィトンが販売している」というだけで、とあるカバンの値段は、無名な会社が販売する場合と比べて、格段に高くなります。
これと同じで、ラーメン屋で販売すると「ラーメン屋で販売する場合の付加価値」が、
自販機で販売すると、「自販機で販売する場合の付加価値」が、それぞれついてくることになります。
では、それぞれが提供する付加価値とは何か?
―ラーメン屋の場合は「体験の購入」、自販機の場合は「手ごろさの購入」だと、僕は考えています。
ラーメン屋でラーメンを購入すると、「ラーメン屋」という空間で、店員とのコミュニケーションや食券の購入、同じ空間でラーメンを食べている人の観察など、様々な「体験」を、ラーメンとともに購入することになります。
一方、自販機で購入した場合、「時間をかけずに即買える」「家の近くで買える」など、様々な意味での「手ごろさ」が手に入ります。
百貨店での買い物とコンビニでの買い物をイメージしていただくと、わかりやすいのではないかと思います。
■観点②「人との接点」
そして、続いて挙げられるのが、「人との接点」です。
1つ目の観点のところでも少し触れましたが、ラーメン屋に行けば店員がいて、他のお客さんがいて、必ず誰かと目を合わせ、少なからず会話を交わすことになります。
一方で、自販機でラーメンを購入し、帰宅してから食べると、誰とも目を合わすことも、会話を交わすこともありません。
どちらが良い悪いの話ではなくて、例えば、「深夜の冬空に冷えた心を、人肌で温めたい」という気持ちの人は、ラーメン屋での人との触れ合いを求めるでしょうし、「会社での人間関係に疲れて帰ったのだから、仕事終わりは独りになりたい」という気持ちの人は、自販機で気軽に食事を済ませたいでしょう。
これが、ラーメン屋とラーメン自販機、2つ目の違いです。
■観点③ 提供者側の想い 質へのこだわりVS量へのこだわり
そして最後は、「質か量か」という観点です。
この観点は、何をやるにしてもついて回る観点なので、些か陳腐な感じがします。
しかし、「量か質か」という選択は、ベンチャー経営者なら常に直面する問題です。
というのも、ベンチャー経営者なら、誰もが量と質の両立を目指しますが、これらは往々にしてトレード・オフになりがちです。
しかし、うまく逆手にとれば、パイの取り合いにならない、別々の販売手法を確立することもできます。
今回の「ラーメンとラーメン自販機」という構図も、このことの好例ではないかと思います。
というのも、ラーメン屋は「質へのこだわり」を反映し、自販機は「量へのこだわり」を反映しているのではないかと、僕は思うのです。
ラーメン屋は、限られた座席で、店長が味や食感にこだわりぬいた、ある種芸術品ともいえるラーメンを、店舗によっては提供タイミングにまでもこだわりを持って提供する。
一方、ラーメン自販機は、冒頭でも登場したように、「誰でも」「いつでも」、自分たちのラーメンを食べてもらえるように、販売量、つまりは大量生産にこだわります。
以上、ベンチャー経営者目線で見た場合のラーメン店とラーメン自販機の違いでした。
―では、僕はこの気づきから何を学ぶのか?
ニュースを見ること、情報収集することは当然大事ですが、ベンチャー経営者として、他社と差別化し、生き抜いていくためには、そこから自分なりの気づきや考察を得ることは、それ以上に重要です。
ということでここからは、僕なりの気づきについて、綴りたいと思います。
■ベンチャー経営者がこれから大事にすべき、たった1つのポイントとは?
ここまで考察してきて、僕は、ラーメン屋VSラーメン自販機という構図は、「店舗販売VS通信販売」「人間による接客VSロボットによる接客」という構図のアナロジーではないかと考えています。
そして、ベンチャー経営者として店舗販売、人による接客を提供している僕にとっては、「通信販売、ロボットによる接客に負けないために」どうすればよいのか、という教訓のようにも感じられます。
―そして僕が、今回の「ラーメン屋VSラーメン自販機」という構図から得た教訓、それは、ベンチャー経営者として「たった1つのポイント」を大切にしなさい、ということです。
その「たった1つのポイント」とはずばり、“人”です。
人と人が触れ合えるという体験の場を提供する、懇切丁寧にお客さんをもてなす、一つ一つの商品/サービスに丹精を込め、細部の細部までこだわり抜いたサービス/製品を提供すすることなど、“人”ならではの価値を提供することです。
逆に言えば、それさえ徹底できれば、どれだけAIが発達し、機械化・自動化が進もうとも、消費者が人である限り、きっとそのベンチャー企業は生き抜いていけるでしょう。
■ベンチャー経営者としての、AIに対する見解
AIと書いてみてふと思い出したのですが、昔、誰だったかから、「土井さんはAIの発展に賛成ですか、反対ですか?」と聞かれたことがあります。
―その時僕は、「大賛成」と答えました。
今でもその考えは変わっていませんが、その理由はこうです。
―AIが発展すると、よい仕事だけが生き残り、人々が豊かになるから。
ここで、「よい仕事」とは、「他人の期待を上回る仕事」のことです。
人でもできる、AIでもできる、そんな仕事は、基本的にAIに任されることになります。なぜなら、一般的に人よりAIの方が生産性が高く、企業にとって有利だからです。
しかし、「人にしかできない」仕事は、確実に生き残ります。
そして、「人にしかできない」仕事は、きっと「いい仕事」です。
機械がする仕事は安定していますが、それは裏を返せば、「期待通り」にしかならないということで「期待を上回る」いい仕事は、決して実現されません。
だから、機械化が進めば進むほど、この世の中には「いい仕事」が増えることになります。
そして、その世の中には、人々が仕事に込めた想いや情熱が満ち満ちていて、その人にしか出せない「個性」が溢れているでしょう。
そんな世の中を、ベンチャー経営者土井けいじは歓迎します。
そして僕自身も“人”という部分を最大限大事にし、研磨し、今日もいい仕事を継続します。
土井けいじでした。